債権各論の定義・論点集

債権各論の法律用語の定義・論点集です。


     
債権各論の定義集
用語定義(その他制度趣旨)詳解
契約相対する両当事者の意思表示の合致によって成立する法律行為。債権発生原因の一つ。
契約自由の原則契約をするかどうかの自由と、いかなる内容の契約をするかの自由とを当事者に認めるもの。所有権の自由とともに私法秩序の根幹をなす。
契約の成立両当事者の合意が必要。両者の意思表示が内容が客観的に一致し、かつ主観的に一致することが必要。なお、一般的に当事者の合意のみで足り、書面の作成などは不要(諾成の原則)。
要式契約書面など一定の方式によらないと成立しないとされている契約。贈与が典型。
契約の申込当事者の一方が先にした方の意思表示。効力の発生時期は到達主義(97条1項)。
申込の拘束力申込をした側が申込を撤回できない状態に置かれていること。承諾期間が定められていなかった場合は、承諾の通知を受けるに相当な期間内発生する(524条)。承諾する側は、申込の拘束力があるうちは、自己の一方的意思によって契約を成立させる権限(申込の承諾適格のある状態)を有することになる。ただ、申込と承諾とでは効力発生時期が異なるから(到達主義と発信主義との違い)、両者は必ずしも一致する訳ではない。
契約の承諾申込をうけて他方がする意思表示。効力の発生時期は発信主義(526条1項)。
承諾延着の通知522条。遅延した承諾は、申込者においてこれを新たなる申込とみなすことができる(523条)。なお、申込撤回の延着の通知につき、527条。
隔地者間の契約空間的に隔たるなど当事者相互の意思連絡にかなりの日時が費やされる契約。当事者が相互に面と向かって締結するなど一方当事者の意思表示は発信と同時に相手方に到達する契約(対話者間の契約)との違いに注意。
申込の誘引申込を勧誘する事実行為。商品に定価をつけて店頭に並べておくことや、価格入りの商品名を掲げたチラシを配ることがこれに当たる。これらの行為を受けて「買おう」という行為が申込にあたり、この時点ではまだ契約は成立しない。
交叉申込一方の申込に対し、承諾にはあたらないが内容的に一致した申込を相手方が行うこと甲が乙に対して、「乙所有のA商品を10万円で買おう」と申し込み、この申込の乙への到達前に、乙が甲に対しAを10万円で売りたいと申し込んだ場合がこれにあたる。内容的にも当事者の点でも一致するので、取引の便宜から契約の成立が認められる。
意思実現による契約の成立申込に対して、承諾の存在を前提とした行為が存在した場合、契約が成立すること。526条2項。
第三者のための契約契約から生ずる権利を契約当事者以外の第三者に直接帰属させることを内容とする契約。生命保険制度などがこれにあたる。
受益の意思表示第三者が債務者に対しておこなう、契約の利益を享受する意思表示(537条2項)。第三者(受益者)の権利発生の要件となる。第三者の権利が発生した後は契約当事者間の合意で第三者の権利を消滅させることはできない(538条)。ただ、債務者は契約自体に基因する抗弁を第三者に対抗できる(539条)。
要約者契約当事者のうち第三者に対して利益を与える義務を相手方に負わせる旨を約した者のこと。 
諾約者契約当事者のうち第三者に対して直接義務を負う旨を約した者のこと。 
受益者第三者のための契約によって利益を享受する第三者のこと。 
補償関係要約者が諾約者に対する権利を受益者に取得させるに至った原因となっている要約者・諾約者間の法律関係のこと。 
対価関係要約者・受益者間の実質的な関係のこと。補償関係のみに着目すれば、要約者が受益者に一方的に利益を与えているように見えなくもないが、対価関係も含めて考えれば、要約者と受益者の利益はつりあいがとれている。対価関係が錯誤などで存在しない場合、要約者から受益者に対する不当利得返還請求権の問題が生じる。
同時履行の抗弁権  
危険負担  
債権者主義  
債務者主義  
解除権  
相当な期間  
催告  
解除の効果  
贈与  
無償契約  
贈与の取消権  
売買  
現実売買契約成立とほぼ同時に契約上の義務の履行が完了する売買契約。自動販売機による売買がその極限形態。
手附契約締結に当たって交付される金銭等のこと。証約手附、解約手附、違約手附などの種類がある。
予約完結権一方の意思表示により契約を成立せしめる権限。一種の形成権。
売買の予約当事者一方または双方に、売買予約完結権を与える合意のこと(前者を売買一方の予約、後者を売買双方の予約という)。不動産についておこなわれ、仮登記担保という形で、債権担保の目的で利用される。
売買の担保責任 売主・買主間の衡平を図る法定の制度。具体的には(a)他人の物の売買(561条、562条、563条)、(b)数量不足または一部滅失(565条)、(c)他人の権利の附着している物の売買(566条、567条)、(d)隠れた瑕疵のある物の売買、に問題になる。なお、担保責任が問題になるのは権利ないし物の瑕疵が契約締結前から存在する場合に限られる。
他人物の売主の解除権 全部他人物でかつ売主が善意のケースのみに発生する。
買主悪意の場合の担保責任買主が悪意の場合は、解除権・損害賠償請求権は認められないケースが多い。例外として、担保権が付着している物の売買では、悪意の買主に損害賠償請求権が認められている。また、全部他人の物の売買、一部他人の物の売買、担保的権利の付着している物の売買は、悪意の買主にも解除権(代金減額請求権)が認められている。
瑕疵担保責任特定の売買目的物につき、瑕疵が存在し、その瑕疵が隠れたものである場合売主に発生する担保責任。不特定物については債務不履行の問題になる(通説)。瑕疵があるとは、目的物に物質的な欠点が存在すること、つまり、目的物が通常有すべき品質・性能を有することをいう。また瑕疵が隠れたものである、ということは、瑕疵が取引界で要求されている普通の注意を用いても発見されえないものであることをいう。
担保責任の効果代金減額、解除、損害賠償が主要な効果。代金減額は一部解除と考えればよい。解除権がつねに発生するのは全部他人物売買のケース。また、損害賠償は信頼利益の賠償のみである(債務不履行のケースと異なり、担保責任においては売主の帰責性が前提になっていないからである)。
担保責任の期間制限「一部他人の物の売買」、「数量不足ないし一部滅失」、「他人の用益的権利の付着している物の売買」「瑕疵ある物の売買」については、買主の売主に対する担保責任追求は、買主が担保責任の原因たる事実を知ってから一年以内に行使されなければならない(564条、565条、566条3項)。長期間を経てから担保責任を追求されると、売主としては、防禦の手段に不当に苦しむことになるからである。除斥期間と解するのが通説。
交換  
債権売主の担保責任 569条1項。実際に裁判で問題になったケースは少ない。
交換  
消費貸借  
準消費貸借  
使用貸借  
使用貸借の終了事由 使用契約が人的信頼関係を基礎として成立するものであることに配慮されたものになっている。
賃貸借  
借地借家法  
賃借権の登記  
賃借権の譲渡、転貸  
雇傭当事者の一方が相手方に対して労務に服することを約し、相手方が之にその報酬を与えることを約するによって効力を生ずる契約のこと(623条)。有償・諾成契約。契約の性質上の理由(労務者が使用者の指揮命令に服する)および契約外の理由(経済的・社会的な力関係の差)から、法の後見的介入による均衡回復が必要とされる。労働基準法など一連の労働法規がその典型。
安全配慮義務「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきもの」(最判昭和50年2月25日民集29・2・143)
「使用者は、・・・労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っている」(最判昭和59年4月10日民集38・6・557)
労災事故や職業病を、債務不履行と法的構成することで、立証責任や時効などの点で労働者を救済する機能がある。
身元保証契約労務者が負うことがあるべき損害賠償債務の保証(身元保証)。ないし、労務者の病気などの場合に余儀なくされるであろう出費などの負担の引受を第三者がすること(身元引受)義理や付き合いでかかる地位を背負い込む者が少なくない一方、負担が長期にわたって存在し、身元保証人の責任が過大になりすぎて酷な場合も少なくなかったため、「身元保証ニ関スル法律」によって、存続期間の制限や使用者の身元保証人への通知義務などが規定された。
請負  
請負人の担保責任  
請負契約と解除権  
委任当事者の一方が法律行為をなすことを相手方に委託し相手方が之を承諾するによって成立する(643条)。諾成契約。相手方の指揮監督に服さない、という点で雇用と異なる。また、仕事の完成が要求されない点で、請負とは異なる。
善管注意義務受任者の義務の一つ。委任の本旨に従い善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う(644条)。当該の委任契約の趣旨と事務の性質とに応じて合理的に事務を処理すべきことが受任者に要求される。
報告義務受任者は委任者の請求あるときはいつでも委任事務処理の状況を報告することを要し、また委任終了時には遅滞なくその顛末を報告することを要する。受任者の義務の一つ。645条。
引渡義務受任者は委任事務を処理するにあたり受け取った金銭その他の物および収受した果実を委任者に引き渡すことを要する。受任者の義務の一つ。646条。
損害賠償責任受任者が委任者に引き渡すべき金額またはその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときはその消費した日以後の利息を払うことを要する。さらに委任者の受けた損害につき賠償責任を負う。 受任者の義務の一つ。647条。 
報酬支払義務有償委任の場合、委任者が負う義務の一つ。委任した事務処理の対価を支払う義務。民法上は無償委任が原則のため、特約がなければ委任者に対して報酬を請求することはできない(648条1項)。
委任の終了委任契約が終了すること。契約一般と共通な終了原因のほか、委任に特有な終了事由もある。(1)解除による終了(651条1項)(2)委任契約特有の終了事由(委任者又は受任者の死亡又は破産)の発生(653条) 
委任の解除委任契約を解除すること。債務不履行解除とは異なる。委任契約が、受任者のためにも利益になるものの場合、解除権に制約が生じるか問題になるが、判例・通説はこれを否定する。
委任終了の効果遡及効は発生しない(652条、620条)。651条1項の場合でも、債務不履行解除の場合であっても、その効果は同様である。
委任終了後の緊急処分義務委任終了の場合で急迫の事情があるときは受任者等(その相続人又は法定代理人含む)は委任者等(その相続人又は法定代理人含む)が委任事務処理を処理することを得るに至るまで必要な処分をなすことを要す(654条)。委任の終了があっても、両当事者の関係が全面的に消滅してしまうわけではない。
委任終了事由の対抗要件委任の終了事由は相手方に通知するか又は相手方が之を知っている場合にでなければ相手方に対抗することはできないこと(655条)。 委任終了事由につき、当事者一方はそれを知っていても他方はそれを知りえない性質のものが多いが、しかしその不知のため不利益をこうむることは適当でないため。
準委任当事者の一方が法律行為にあらざる事務をなすことを相手方に委託し相手方が之を承諾するによって成立する(656条、643条)。事務とは、生活に必要な一切の仕事であって、法律行為であると事実的な行為であるとを問わず、精神的であると物質的であるとを問わず、高度に技術的であると機械的であるとを問わない。
寄託  
無償寄託  
定期金給付  
和解  
組合  
事務管理 債権発生事由の一つ。他人の事務処理を制度の本質とする点で委任と共通する面をもつ。
準事務管理 他人のためにする意思を管理者がもたない点で、通常の事務管理とは異なるが、その他の点では通常の事務管理と同様なので、それと同様の効果を及ぼしてもよいと解する余地がある。
不当利得法律上の原因なくして他人の財産又は労務により利益を受け、これが為に他人に損失を及ぼした場合。「他人の財貨からの不当利得」と「給付による不当利得」とに分類される。
他人の財貨からの不当利得  
給付による不当利得  
不当利得の成立要件(a)「法律上ノ原因ナクシテ」(b)返還請求権者「ノ財産又ハ労務ニ因リ」不当利得義務者が「利益ヲ受ケ」(c)「之ガ為メニ」(d)返還請求権者に「損失ヲ及ボシタ」 
不当利得類型論  
騙取金による弁済  
転用物訴権  
三角関係的不当利得  
非債弁済(広義)法律上の原因の存在を前提として給付がなされたが、この法律上の原因が存在しなかった場合のこと。
(狭義)債務の存在しないことを知って弁済すること。
705条。
期限前の債務弁済債務者が期限前と知らずに弁済した場合、不当利得返還請求できるか問題になる。権利関係が煩雑になるので、請求はできない(706条)。しかし、債権者は期限前の弁済によって受けた利益についてはこれを返還しなければならない(706条但書)。
他人の債務の弁済 705条。707条。
不法原因給付708条。 
不法行為  
権利侵害  
違法性  
故意と過失  
損害  
過失相殺722条2項。 
使用者責任  
監督者責任  
共同不法行為  
被害者側の過失  
被害者の素因  
企業損害  
不法行為と時効  
請求権競合  

民法債権各論の論点集
論点問題の所在詳解                                                             

<参考文献>
内田貴『民法U』(東京大学出版会、1997)
澤井裕『テキストブック事務管理・不当利得・不法行為(第二版)』(有斐閣、1996)
鈴木禄弥『債権法講義(第三版)』(創文社、1995)
平井宜雄『債権各論U(第二版)』(弘文堂、1992)





定義・論点集〜民法に戻る    トップページに戻る







100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!